KNOWLEDGE HUB
ナレッジハブ
2025/12/9
SGEのスナップショット(AI概要)表示条件の分析
「検索結果の一番上にAIの回答がデカデカと表示されて、ウチのサイトが全然見られなくなったんですが…」
最近、私の元に寄せられる相談の中でも、特に深刻度を増しているのがこの「SGE(Search Generative Experience)」、現在は「AI Overview(AI概要)」と呼ばれる機能に関するものです。一生懸命SEO対策をして検索順位1位を獲得したのに、そのさらに上にAIによる要約が表示され、ユーザーはそこで満足して帰ってしまう。いわゆる「ゼロクリック」の悪夢です。
GoogleはこのAI概要の表示ロジックをブラックボックスにしていますが、私はここ数ヶ月、数千パターンのクエリを実際に叩き続け、どのような条件で「スナップショット(AIによる回答枠)」が出現し、逆にどのような条件なら表示されないのかを徹底的にテストしてきました。
その結果、完全ランダムに見えるAIの挙動にも、明確な「法則」と「トリガー」が存在することが分かってきました。この法則を知らずに闇雲に記事を量産するのは、ルールを知らないままスポーツの試合に出るようなものです。
ここでは、現役のSEOスペシャリストとして現場で検証したデータを基に、SGEスナップショットが表示される具体的な条件と、AIと共存(あるいは対抗)するための分析結果を包み隠さず公開します。
目次
1. スナップショットが表示されやすいクエリの特徴
まず結論から申し上げますと、SGEのスナップショットは「すべての検索」で表示されるわけではありません。私の観測範囲では、表示されるクエリには明確な傾向、つまり「AIがしゃしゃり出たくなる場面」があります。
最も表示されやすいのは、「複数の情報を統合して答える必要があるクエリ」です。
例えば、「東京タワー」という単一キーワードで検索しても、ナレッジパネル(右側に出る情報枠)が出るだけで、生成AIの出番は少ない傾向にあります。しかし、「東京タワー周辺で、子供連れでも入れて、個室があるランチのお店」と検索すると、AIは喜んでスナップショットを表示します。これは、従来の検索エンジンでは「複数の条件」を一度に満たすページを見つけるのが難しく、AIによる「情報の編集・統合」が価値を発揮するからです。
私が検証したクエリタイプ別の表示傾向を整理しました。これを見るだけで、狙うべきキーワードの質が変わってくるはずです。
| クエリの種類 | 具体例 | SGE表示頻度 | 考察 |
|---|---|---|---|
| 複合条件(N語掛け合わせ) | 「30代 メンズ 化粧水 乾燥肌 安い」 | 極めて高い | ユーザーの要望が具体的であるほど、AIは「パーソナライズされた回答」を作成しようとします。 |
| 比較検討(vs) | 「iPhone15 vs Pixel8 どっちがいい」 | 高い | メリット・デメリットを表形式などで整理して提示するケースが多発します。 |
| 手順・方法(How to) | 「ネクタイの結び方 ウィンザーノット」 | 高い | ステップバイステップの情報を、複数のサイトから抽出してまとめ上げます。 |
| ナビゲーショナル(指名検索) | 「Amazon」「YouTube」 | 低い | 目的地が明確な場合、AIが介入する余地(必要性)がないため表示されにくいです。 |
このように、ユーザーが「迷っている」「答えを探しあぐねている」と推測されるクエリほど、SGEは積極的に表示されます。逆に言えば、「ニッチで複雑な悩み(ロングテールキーワード)」こそが、SGEの主戦場になっているのです。
2. YMYL領域におけるSGE表示の抑制と傾向
SEO担当者なら誰もが敏感になる「YMYL(Your Money or Your Life:お金と健康など人生に重大な影響を与える領域)」ですが、SGEにおいてはこの傾向がさらに顕著です。
Googleは、AIが生成する「ハルシネーション(もっともらしい嘘)」が、ユーザーの生命や財産に損害を与えることを極端に恐れています。そのため、医療、法律、金融といったシビアなYMYL領域では、SGEの表示自体が抑制されるか、表示されたとしても非常に慎重な免責事項(ディスクレーマー)が付記される傾向にあります。
私が実際に医療系のキーワードでテストしたところ、「癌の治療法」や「インフルエンザ 薬」といった直接的な医療アドバイスを求めるクエリでは、SGEが表示されないケースが多々ありました。表示されたとしても、「※これは医療アドバイスではありません。医師に相談してください」といった警告が目立ちます。
しかし、同じYMYLでも「金融商品」の領域では少し挙動が異なります。「おすすめのクレジットカード」や「住宅ローン 金利 比較」といったクエリでは、SGEが積極的に比較表を生成してくるのです。
| YMYLカテゴリ | SGEの表示傾向 | 考えられる理由と対策 |
|---|---|---|
| 医療・健康(病気・薬) | 抑制傾向(表示されないことが多い) | 誤情報のリスリスクが高すぎるため。対策としては、公的機関の引用を徹底し、信頼性を高めるしかない。 |
| 金融(投資・カード・ローン) | 積極的(比較情報として表示) | データの比較はAIの得意分野であるため。独自のスペック比較表などを作成し、AIにデータを読み取らせる戦略が有効。 |
| 法律・税務 | 中程度(一般論のみ表示) | 「法律の条文」などの事実は表示するが、個別の法的判断は避ける傾向。 |
| 時事ニュース・選挙 | 抑制傾向 | フェイクニュース拡散防止のため、リアルタイム性の高いセンシティブな話題はAI回答を控える動きがある。 |
このことから分かるのは、YMYL領域で戦う場合、「AIが表示されない領域(医療相談など)」では従来のSEOが依然として有効であり、「AIが表示される領域(金融比較など)」では、AIの引用元になるためのE-E-A-T対策が急務であるということです。
併せて読みたい記事:AIを活用したWebサイト分析|データから勝ち筋を見つける方法
3. 「とは」検索と「方法」検索の表示差
ユーザーの検索意図(インテント)によって、SGEが表示するスナップショットの「型」が全く違うことにお気づきでしょうか。大きく分けて「Knowクエリ(~とは)」と「Doクエリ(~の方法)」では、AIの振る舞いも、引用されやすいコンテンツの構造も異なります。
1. 「とは」検索(Knowクエリ)の場合
「DXとは」「ブロックチェーンとは」といった定義を求める検索の場合、SGEは「辞書のような要約」を表示します。ここでは、Wikipediaのような客観的で簡潔な記述が好まれます。
私が検証した限り、このタイプのスナップショットに引用されるには、記事の冒頭(リード文の直後など)に、「DXとは、~のことです。」という「アンサーパラグラフ(回答段落)」を明確に配置することが極めて効果的です。
2. 「方法」検索(Doクエリ)の場合
「ネクタイの結び方」「パンク修理 方法」といった検索では、SGEは「番号付きリスト」や「ステップ形式」で回答を表示します。
ここで引用されるためには、記事内の見出し構成そのものをステップ化する(h2タグで「手順1:~」「手順2:~」とする)か、olタグ(番号付きリスト)を用いて構造化することが必須条件となります。
面白いことに、「方法」検索のSGEスナップショットには、テキストだけでなく「画像」や「動画」のサムネイルが一緒に引用されるケースが多いです。テキストだけの記事よりも、各ステップに対応したオリジナル画像を入れている記事の方が、SGE内での占有率が高まる傾向にありました。
つまり、クエリの意図に合わせて「AIが使いやすいパーツ」を用意してあげることが重要なのです。「とは」なら定義文を、「方法」ならリストと画像を。AIに対する「お膳立て」ができるライターだけが、スナップショットの枠を勝ち取ることができます。
付随記事:中小企業のWeb集客をAIで最大化!低コストで始める実践ガイド
4. 強調スニペットとSGEスナップショットの競合
これまでSEOの「ポジションゼロ(検索順位1位の上の枠)」として君臨してきた「強調スニペット」。SGEの登場により、この強調スニペットはどうなってしまうのか? 私の観測データでは、非常に興味深い「競合」と「共存」の関係が見えています。
基本的には、SGEのスナップショットは強調スニペットを「飲み込む」形で展開されます。
ユーザーが「生成」ボタンを押す(あるいは自動展開される)と、強調スニペットが表示されていた位置にSGEの回答が覆いかぶさるように表示されることが多いです。
しかし、中身のロジックは別物です。
| 機能 | 強調スニペット | SGEスナップショット |
|---|---|---|
| 生成の仕組み | 特定のWebページからの「抜粋(コピー)」 | 複数のWebページ情報を学習・統合した「生成(リライト)」 |
| 出典の数 | 原則1つのサイト | 通常3つ以上のサイト(カルーセルで表示) |
| クリック率(CTR) | 非常に高い(1位以上の流入) | 強調スニペットより低い傾向(回答完結型のため) |
| 対策の方向性 | 簡潔な回答をページ内に用意する | 独自の視点やデータを加え、AIの「参照元」の一つになる |
現場で起きている現象として、強調スニペットを獲得している強いページは、SGEの参照元(ソース)としても採用されやすい傾向にはあります。しかし、SGEは「複数の意見」をまとめたがるため、強調スニペットを取れていない2位や3位、あるいは10位以下の記事であっても、「独自の視点」が含まれていればSGEのソースとして採用される逆転現象が起きています。
これはチャンスです。これまでは「1位を取らなければ意味がない」世界でしたが、SGE時代は「AIの材料として優秀なら、順位が低くてもトップに露出できる」可能性があるのです。
5. Webサイトの権威性が表示トリガーになるか
「やっぱり大手の公式サイトや、ドメインパワーが強いサイトじゃないとSGEには出ないんでしょう?」
そう諦めている中小企業のWeb担当者様も多いですが、私の検証結果は「イエスでもあり、ノーでもある」というものです。確かに、SGEは情報の信頼性を担保するために、権威あるサイト(政府機関、大手企業、有名メディア)を優先的に引用します。特にYMYL領域ではその傾向が顕著です。
しかし、「トピックオーソリティ(特定のテーマにおける専門性)」が高いサイトであれば、ドメインパワーが弱くてもSGEに引用されるケースを多数確認しています。
例えば、ある個人の「コーヒー愛好家ブログ」が、大手カフェチェーンの公式サイトを押しのけて、SGEの「美味しいコーヒー豆の選び方」のソースとして採用されていた事例があります。なぜでしょうか?
その個人ブログは、大手サイトが書かないような「豆の産地ごとの細かい味の違い」や「焙煎度合いによる挽き方の微調整」といった、極めてニッチで専門的な情報(一次情報)を網羅していたからです。AIは、汎用的な情報しか持たない大手サイトよりも、そのトピックについて「より深く、詳細に」語っているサイトを「専門家」として認識し、回答のソースとして採用したのです。
つまり、権威性(Authority)とは、単に「会社の規模」や「被リンクの数」だけではありません。「そのトピックについて、どれだけ詳しく、独自の情報を発信し続けているか」という積み重ねが、AIに対する最大の権威性シグナルとなります。
「ドメインパワーで勝てないなら、情報の深度と独自性で勝負する」。これが、中小規模サイトがSGE時代を生き抜くための、唯一にして最大の戦略と言えるでしょう。
関連ニュース:AIで加速するWebマーケティング戦略|TROBZが教える次世代の集客術
6. 情報の構造化とSGE引用の相関関係
「良い記事を書いているのに、なぜかSGEにピックアップされない」
そのような悩みを持つサイトのHTMLソースコードを覗いてみると、ある共通点が見つかることがあります。それは、「記事の構造が、人間には見やすくても、マシン(AI)には読み取りにくい」という状態です。
AIは、私たちがブラウザで見ている美しいデザインされた画面を見ているわけではありません。彼らが見ているのは、裏側にあるHTMLタグの羅列です。つまり、視覚的な装飾で「見出しっぽく」見せていても、正しいHTMLタグ(h2、h3など)が使われていなければ、AIはそれを「ただの平文」として処理してしまいます。
私が以前、あるレシピサイトの改善案件で検証を行った際のデータがあります。元々の記事では、材料や手順がただの改行(<br>)や中黒(・)で書かれていました。これを、正しいリストタグ(<ul>、<ol>)とテーブルタグ(<table>)に書き換えただけで、記事の中身(テキスト)は一文字も変えていないにもかかわらず、翌週からSGEのスナップショットにそのレシピが引用されるようになったのです。
SGEに愛される構造化のポイントを、優先度順に整理しました。
| HTML要素 / 構造化データ | SGEへの影響度 | 実装のポイント |
|---|---|---|
| リストタグ (<ul>, <ol>) | 最高 (SGEの好物) | 手順、メリット・デメリット、特徴の一覧などは、必ずリストタグでマークアップする。 |
| テーブルタグ (<table>) | 高 | スペック比較、料金表などは表にする。AIは表データを非常に高い精度で抽出・再構成する。 |
| 見出しタグ (<h2>〜<h4>) | 高 | 見出し自体を「質問(Q)」、直下の本文を「回答(A)」という構造にする。 |
| 構造化データ (Schema Markup) | 中〜高 | FAQPage、HowTo、Productなどのスキーマを設定し、コンテンツの意味を明示的に伝える。 |
特に「リスト」と「表」は強力です。SGEの回答生成プロセスにおいて、AIは複数の情報源から「構造化されたデータ」を優先的に抽出し、それらをパズルのように組み合わせて一つの回答を作り上げます。あなたのサイトが「整理されたピース(データ)」を提供していれば、AIにとって使い勝手の良いパートナーになれるのです。
7. 複数の情報源(ソース)が引用される仕組み
SGEのスナップショットを見て、「なぜこの3つのサイトが選ばれたのだろう?」と疑問に思ったことはありませんか? 検索順位が1位、2位、3位のサイトがそのまま選ばれるわけではありません。ここには、AI特有の「情報の補完関係(コラボーレーション)」というメカニズムが働いています。
従来の検索エンジンは「ベストな1ページ」を探そうとしました。しかし、SGEは「ベストな回答」を作ろうとします。一つのサイトだけで完璧な回答が作れない場合、AIは複数のサイトから情報を“つまみ食い”して統合します。
例えば、「キャンプ初心者の持ち物」というクエリの場合、以下のような引用のされ方が発生します。
- サイトA(アウトドアメーカー): 「テントの種類」についての解説が引用される。
- サイトB(個人ブログ): 「実際に使って便利だった小物」のリストが引用される。
- サイトC(比較サイト): 「予算別の総額目安」の表が引用される。
これはつまり、「記事全体で勝負しなくても良い」ということを意味します。記事の中の「ある特定のセクション(章)」だけが飛び抜けて詳しければ、その部分だけがピンポイントでSGEの構成要素として採用されるチャンスがあるのです。
私がコンサルティングを行っているクライアントには、「幕の内弁当のような網羅的な記事よりも、一品特化の専門店のような記事を目指してください」とアドバイスしています。「全てにおいて70点」のサイトよりも、「ある一点において100点」のサイトの方が、AIが回答を組み立てる際の「部品」として採用されやすい傾向にあります。
関連記事:【完全保存版】広告の審査落ちもう怖くない!原因分析から再審査請求までプロが徹底解説
8. モバイルとデスクトップでの表示違い
SGE対策を考える上で、絶対に見落としてはいけないのが「デバイスによる表示の違い」です。特にスマートフォンの画面においては、SGEの破壊力(Webサイトへの流入減少リスク)はデスクトップの比ではありません。
デスクトップ(PC)検索では、SGEのスナップショットが表示されても、画面右側や下部に従来の検索結果が見えていることが多いです。しかし、モバイル(スマホ)検索では、SGEが展開されるとファーストビュー(最初に表示される画面領域)のほぼ100%を占有してしまいます。
私が複数のデバイスで検証した挙動の違いをまとめます。
| 比較項目 | デスクトップ (PC) | モバイル (スマホ) |
|---|---|---|
| 占有面積 | 画面上部(一部、自然検索結果も見える) | 画面全体を占有(スクロールしないと自然検索が見えない) |
| 生成ボタンの挙動 | 自動展開されるケースが増加傾向 | 通信量を配慮してか、「生成する」ボタンをタップさせるケースも多い |
| カルーセル(引用元) | 右側にカード型で表示される | スナップショットの下部、またはテキスト内のリンクとして表示 |
| ゼロクリックのリスク | 中程度 | 極めて高い |
特にBtoC(一般消費者向け)のビジネスを行っている場合、ユーザーの多くはモバイルからのアクセスでしょう。もし、ターゲットとなる主要キーワードでSGEが「自動展開」されるようになった場合、検索順位1位であっても流入が半減する覚悟が必要です。
対策としては、SGEのスナップショット内に表示される「サムネイル画像」を魅力的なものにする、あるいは記事のタイトルを「AIの回答では満足できない、体験談が含まれていること」が伝わるものに工夫する(例:「【実体験】〇〇やってみた結果」など)ことが、モバイルユーザーの指を止めるための生命線となります。
9. SGEが表示されないクエリジャンル
ここまで「SGEが表示される条件」を見てきましたが、逆に「SGEが沈黙する(表示されない)条件」を知ることも重要です。AIが苦手とする、あるいはGoogleがあえてAIを表示させない領域こそが、従来のSEOで確実にトラフィックを稼げる「安全地帯」だからです。
私の調査では、主に以下の3つのジャンルにおいて、SGEの表示率が極端に低いことが分かっています。
- リアルタイム性が極めて高い情報(速報ニュース、交通情報)
「今の山手線の遅延状況は?」「今日の野球の試合経過」といったクエリです。AIの学習データにはタイムラグがあるため、Googleは最新情報をWeb検索の結果(ニュース枠やリアルタイム検索)に委ねる傾向があります。 - 単純な事実確認・ナビゲーション(天気、計算、株価)
「東京 天気」「1ドル 何円」「電卓」といったクエリです。これらはAIが文章を生成するまでもなく、既存の「強調スニペット」や「ワンボックス(電卓機能など)」で0秒で解決するため、生成AIが出る幕がありません。 - センシティブ・不適切なコンテンツ
アダルト、暴力、ヘイトスピーチに関連するクエリはもちろん、医学的に論争があるテーマなどでもSGEは表示を控えます。Googleのセーフティフィルターは、AI生成コンテンツに対して通常の検索結果よりも厳格に適用されています。
これらの領域でコンテンツを作成している場合、SGEの脅威は比較的低いと言えます。特に「最新トレンド」や「速報性」を売りにするブログやメディアは、AIが学習する前の「情報の空白地帯」を攻めることができるため、SGE時代においても強い競争力を維持できるでしょう。
関連記事はこちら:リッチメディア広告とは?ユーザーの心を掴む次世代のインタラクティブ広告を徹底解説
10. 表示条件を逆手に取ったコンテンツ戦略
SGEの表示ロジック、抑制条件、引用の仕組み。これらを総合すると、私たちがこれから取るべき「表示条件を逆手に取った戦略」が見えてきます。
それは、「AIに食われるコンテンツ」と「AIに勝つコンテンツ」を明確に分けて運用するというハイブリッド戦略です。
戦略A:AIに「あえて」食わせる(認知獲得)
SGEが表示されやすい「とは」検索や「比較」検索においては、AIに引用されることを最優先にします。記事の構造を整理し、結論を先に書き、表やリストを多用して、AIのスナップショット内に「自社名」や「リンク」を表示させることを狙います。ここは「流入」よりも「認知(ブランディング)」の場と割り切ります。
戦略B:AIが真似できない「体験」で勝負する(流入獲得)
一方で、SGEが表示されにくい、あるいは表示されても満足度が低い領域を攻めます。それは「個人の主観」「感情」「物語」「速報」です。
「〇〇のスペック比較」はAIに任せましょう。人間が書くべきは「〇〇を雨の日に使ってみて、泥だらけになった時の掃除のしやすさ」といった、泥臭い一次情報です。
具体的なコンテンツの作り分けイメージは以下の通りです。
| 戦略 | ターゲットクエリ | コンテンツの内容 | ゴール |
|---|---|---|---|
| AI共存型 | 「概要」「手順」「比較」 | 構造化されたデータ、簡潔な回答、事実の羅列。 | SGE引用枠の獲得 |
| AI対抗型 | 「感想」「失敗談」「考察」 | エモーショナルな文章、独自の画像、動画、アンケート結果。 | サイトへのクリックとファン化 |
全てをAIに対抗しようとするのではなく、AIが得意なことはAIに利用させ、AIができないことで人間を惹きつける。この「柔道」のような柔軟な姿勢こそが、激変する検索環境を生き抜くための最適解なのです。
AIと共存するための現実的な適応策
SGE(AI概要)の表示条件について、クエリの特徴からHTML構造、そして具体的な戦略までを深掘りしてきました。検索結果画面の変化は、私たちWeb制作者にとって脅威に見えるかもしれませんが、その裏側にあるロジックは極めて論理的です。
この記事で最もお伝えしたかったのは、「AIは魔法で回答を作っているのではなく、あなたのサイトの『構造化されたデータ』を必要としている」という事実です。AIを敵視するのではなく、AIにとって「使いやすい情報源」になること、そしてAIには語れない「人間の体験」を強化すること。この両輪を回せるサイトだけが、これからの時代もユーザーに選ばれ続けます。
明日からできる具体的なアクションとして、まずは「スマホで自社の主要キーワードを検索し、SGEが表示されるかを確認すること」。そして、表示される場合は「記事内に<table>タグを使った比較表や、<ol>タグを使った手順リストを追加し、情報の構造を明確にすること」を試してみてください。
検索エンジンの進化は止まりませんが、それを使うユーザーが「信頼できる答え」を求めているという本質は変わりません。変化を冷静に分析し、淡々と適応していきましょう。

執筆者
畔栁 洋志
株式会社TROBZ 代表取締役
愛知県岡崎市出身。大学卒業後、タイ・バンコクに渡り日本人学校で3年間従事。帰国後はデジタルマーケティングのベンチャー企業に参画し、新規部署の立ち上げや事業開発に携わる。2024年に株式会社TROBZを創業しLocina MEOやフォーカスSEOをリリース。SEO検定1級保有
NEXT
SERVICE
サービス

