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2025/12/13
SGE時代のゼロクリック検索とCTR改善策:AIに奪われた流入を取り戻す実践テクニック
「検索順位は1位をキープしているのに、CTR(クリック率)が目に見えて下がっている…」
「記事を公開しても、以前のような爆発的なアクセスが見込めなくなった」
もしあなたが今、このような現象に直面しているなら、それはコンテンツの質が落ちたからではありません。検索エンジンの仕組みそのものが劇的に変化したからです。GoogleのSGE(Search Generative Experience)やAI概要(AI Overviews)の導入により、ユーザーは検索結果画面(SERPs)上で答えを知り、サイトに訪れることなく検索を終了する「ゼロクリック検索」が常態化しつつあります。
SEO担当者にとって、これは悪夢のように思えるかもしれません。しかし、嘆いていても状況は変わりません。AIが答えを提示する時代だからこそ、逆に「AIの回答だけでは満足できないユーザー」を確実に自社サイトへ誘導するための、新しいCTR改善策が必要なのです。
この記事では、SGE環境下で激減するクリックを取り戻すために、私が現場で検証し効果を実感した具体的な施策を公開します。タイトルの付け方からサムネイルの選定、そしてAIの回答を「呼び水」にする高度なテクニックまで。ゼロクリックの波を乗りこなし、濃い見込み客だけを集めるための生存戦略を、一緒に見ていきましょう。
目次
1. 検索結果画面で完結するユーザー行動の理解
対策を講じる前に、敵を知ることから始めましょう。SGEの登場によって、ユーザーの検索行動はどう変わったのでしょうか。これまで、ユーザーは「検索窓にキーワードを入力」し、「表示されたリンクの中から良さそうなものを選んでクリック」し、「サイト内で答えを探す」というプロセスを踏んでいました。
しかし現在は、検索結果のファーストビュー(最上部)に、AIが生成した「完璧な要約」が表示されます。例えば「iPhone 再起動 方法」と検索すれば、手順が箇条書きで表示され、ユーザーはそれを読んでスマホを操作し、ブラウザを閉じます。サイトへの遷移は発生しません。これが「ゼロクリック検索」の正体です。
ある調査データによると、検索行動の半数以上がすでにゼロクリックで完結しているという報告もあります。特に、「知りたい(Know)」というニーズ、それも「事実確認」や「単純な定義」を求めるクエリにおいては、この傾向が顕著です。
一方で、すべての検索がゼロクリックになるわけではありません。AIの回答を見たユーザーが、「もっと詳しく知りたい」「本当かな?」「他の人の意見はどうだろう」と感じた時だけ、下部のリンクをクリックします。つまり、これからのCTR対策とは、「AIの回答で満足させない(渇望感を残す)」か、「AIの回答の根拠として信頼される」かの二択になるのです。
SGE環境下におけるユーザー心理の変化を、従来の検索と比較して整理しました。この違いを理解することが、すべての施策の出発点となります。
| 比較の視点 | 従来の検索行動 (SEO) | SGE環境下の検索行動 |
|---|---|---|
| 初期行動 | タイトルを見てクリックするか判断する | AIの回答(要約)を読んで満足するか判断する |
| クリックの動機 | 「答えが知りたい」 | 「詳細を確認したい」「裏付けが欲しい」「体験談が読みたい」 |
| 滞在時間 | 探す時間も含めて長い | 検索画面での滞在が長く、サイト遷移後は目的意識が高い |
| 離脱ポイント | 検索結果に戻る (Back button) | AI回答を読んで検索終了 (Zero-click) |
この表から分かるように、私たちは「答えを提供する」だけでは不十分な時代に突入しました。AIが提供できる「標準的な答え」を超えた、プラスアルファの価値(感情、体験、独自データ)を検索結果画面上でチラ見せできた時だけ、ユーザーの指は動くのです。
参考ページ:SEO対策を成功させるための必須ポイントとは?
2. AI概要からのクリックを誘うタイトルの付け方
「タイトルタグにキーワードを左詰めで入れる」。これはSEOの基本中の基本ですが、SGE時代にはこれだけでは不十分、あるいは逆効果になることすらあります。
なぜなら、事実や正解だけを端的に示したタイトルは、AIの回答と重複してしまい、「ああ、AIが言っていることと同じことが書いてあるな」と判断され、スルーされてしまうからです。クリックされるためには、AIには真似できない「人間臭さ」や「一次情報の匂い」をタイトルから漂わせる必要があります。
私が推奨するSGE時代のタイトル戦略は、「エモーショナル・フック(感情のフック)」と「ギャップ・トリガー(情報の欠落)」の活用です。
具体的には、以下のような要素をタイトルに盛り込みます。
- 体験・主観: 「やってみた」「失敗した」「買ってよかった」
- 数字・データ: 「3ヶ月検証」「100人に調査」「利益率15%改善」
- 逆説・意外性: 「実は間違い」「教科書通りではダメな理由」
これらは、AIが生成する「平均的で無難な回答」とは対極にある要素です。ユーザーはAIの優等生的な回答を見た後、「で、実際どうなの?」という本音を知りたがります。その心理を突くのです。
実際にCTRが改善したタイトルのBefore/Afterを比較してみましょう。
| ターゲットキーワード | 従来のSEOタイトル (AIと被る) | SGE対策タイトル (クリックを誘う) | 改善のポイント |
|---|---|---|---|
| プロテイン 飲み方 | プロテインの効果的な飲み方とタイミングを解説 | 【失敗談】プロテインを1年飲み続けて分かった「朝」と「夜」の決定的な違い | 一般論ではなく「個人の検証結果」であることを強調し、AIにはない知見を期待させる。 |
| SEO対策 方法 | 初心者でもわかるSEO対策の基本的なやり方まとめ | 教科書通りのSEO対策で順位が落ちた件。現場で本当に効いた3つの施策 | 「逆説」と「現場の一次情報」を提示し、AIの優等生回答に対するアンチテーゼを示す。 |
| 東京 カフェ おすすめ | 東京のおすすめカフェ人気ランキングTOP10 | AIには選べない?東京のカフェマニアが「雨の日」にだけ通う隠れ家リスト | 「AIには選べない」と挑発し、「マニア視点」という権威性と限定性を付加する。 |
このように、タイトルの中に「AIが語れない文脈(コンテキスト)」を含めることが重要です。SGEのスナップショットが表示されたとしても、その横や下に並ぶあなたのタイトルが魅力的であれば、ユーザーは必ずクリックします。AIを「前座」として利用し、メインディッシュ(あなたの記事)へ誘導する意識を持ちましょう。
次に読む:本気でSEOに取り組むなら知っておきたい上位表示の秘訣
3. スナップショット下部のリンクカード対策
SGEのスナップショット(AI回答枠)には、テキストによる回答だけでなく、右側や下部に「リンクカード(カルーセル)」と呼ばれるWebサイトへのリンク枠が表示されます。ここに入り込むことができれば、検索順位1位以上の露出効果を得ることができ、CTRは劇的に向上します。
では、どうすればこの特等席を獲得できるのでしょうか。Googleは具体的なアルゴリズムを公開していませんが、私の検証では、リンクカードに採用されるページには以下の特徴があります。
- トピックとの関連性が極めて高い画像がある:
リンクカードは視覚的な要素が強いため、記事の内容を象徴する高品質なアイキャッチ画像や、図解が含まれているページが優遇されます。 - 構造化データが正しく実装されている:
AIが記事の内容を機械的に理解できるよう、Schema Markup(Article, FAQPage, HowToなど)が設定されていることが必須条件に近いです。 - 回答の「ソース(根拠)」として引用されている:
AIが回答を作成する際に、そのページの情報を参照した場合、出典元としてリンクカードが表示されます。つまり、AIが使いやすい「事実(データ、定義、手順)」を含んでいることが重要です。
特に意識すべきは、「1つのページで複数のクエリに対応しようとしない」ことです。
AIはピンポイントな質問に対して、ピンポイントな回答を生成します。そのため、テーマが散漫な「幕の内弁当」のような記事よりも、特定のトピックについて深掘りした「専門店」のような記事の方が、リンクカードとして採用されやすい傾向にあります。
例えば、「キャンプ用品 おすすめ」という広範な記事よりも、「キャンプ用チタンマグカップの保温性比較」という特化記事の方が、関連する具体的なクエリ(「チタンマグ 保温性」など)でSGEのリンクカードに表示される確率は高まります。
また、リンクカードのクリック率を高めるためには、「サイト名(ブランド名)」と「ファビコン」の整備も忘れてはいけません。SGEのカードには、ドメイン名だけでなくサイト名が目立つように表示されます。ここで「〇〇ブログ」のような汎用的な名前よりも、「〇〇専門メディア」「〇〇公式」といった信頼感のある名称が表示されている方が、ユーザーは安心してクリックできます。
4. 「続きを読まないと損」と思わせる導入文
SGE環境下では、運良くクリックを獲得できたとしても、ページを開いた瞬間に「なんだ、AIが言ってたことと同じか」と思われてしまえば、ユーザーはすぐにブラウザバック(直帰)してしまいます。これを防ぐためには、記事の導入文(リード文)の役割を再定義する必要があります。
これまでのSEOライティングでは、「読者の悩みに共感し、記事の内容を要約する」ことがリード文の正解でした。しかし、SGE時代にはこれだけでは不十分です。AIが要約を提供してしまった後だからこそ、人間が書くリード文には「AIには書けなかった『詳細』や『ニュアンス』への誘い」が求められます。
具体的には、「結論は提示しつつ、その『裏側』や『例外』があることを匂わせる」テクニックが有効です。
これを私は「Yes, but(そうです、しかし)構文」と呼んでいます。
まず、AIが出すであろう一般的な回答(正解)を肯定します(Yes)。その上で、「しかし、現場ではこういうケースもあります」「実は、この条件だと逆効果になります」といった、プロならではの視点を提示するのです(But)。
SGE時代の導入文の書き方を、従来のスタイルと比較してみましょう。
| 要素 | 従来のリード文 | SGE時代のCTRを高めるリード文 |
|---|---|---|
| 結論の提示 | 「この記事では〇〇について解説します」と予告する。 | 「結論から言うと〇〇です」と断言し、AIと同じ土俵に立つ(信頼獲得)。 |
| フック(引き) | 「〇〇で悩んでいませんか?」と共感する。 | 「ただし、9割の人が誤解している点があります」と、AI情報の不完全さを指摘する。 |
| 読むメリット | 「基礎知識が身につきます」 | 「失敗しないための具体的な手順と、筆者の実体験データ公開」 |
このように、リード文で「AIの情報だけでは危険かもしれない」「ここにはもっと深い真実がある」と感じさせることができれば、ユーザーはスクロールの手を止め、本文を読み進めてくれます。滞在時間が伸びれば、それはGoogleへの「高品質なコンテンツ」というシグナルとなり、結果として検索順位やSGEでの引用率の向上にも繋がる好循環が生まれます。
次のおすすめ:SEO対策で競合サイトに差をつけるための実践的アプローチ
5. サムネイル画像がクリック率に与える影響
「たかが画像」と侮ってはいけません。SGEのリンクカードや検索結果において、サムネイル画像(アイキャッチ画像)は、タイトルの次に、あるいはタイトル以上にクリック率を左右する重要な要素です。
特にスマートフォンでの検索時、SGEのカルーセル表示では画像が大きく表示されます。ここで、ありきたりなフリー素材(外国人が握手している写真や、抽象的なPCのイラストなど)が表示されていると、ユーザーの目は素通りします。「どこかで見たことがある画像」は、脳が自動的に「広告」や「質の低い量産記事」として処理してしまうからです。
SGE時代にクリックされるサムネイルには、以下の3つの特徴があります。
- 独自性(オリジナリティ):
自分で撮影した写真、自社で作成した図解やグラフなど、そのサイトにしかない画像であること。AIは画像の類似性も判断できるため、オリジナル画像は高く評価されます。 - 情報の含有量:
画像を見ただけで「何の記事か」「どんなメリットがあるか」が分かること。画像内に大きく結論となるテキストを入れたり、比較表をそのままサムネイル化したりする手法が有効です。 - 高コントラスト・視認性:
スマホの小さな画面でも何が写っているか判別できる、はっきりとした色使いや構図であること。
私が推奨しているのは、「記事の内容を要約したインフォグラフィック」をアイキャッチにすることです。例えば、「MEO対策のメリット」という記事なら、文字だけで「MEOとは」と書くのではなく、MEOで集客が伸びているグラフのイラストにするのです。
また、WordPressなどのCMSでは、アイキャッチ画像を設定するだけでなく、記事内の重要なセクション(h2見出しの下など)にも関連画像を配置し、alt属性(代替テキスト)を適切に入力することを忘れないでください。SGEはアイキャッチ画像だけでなく、記事内の最も関連性の高い画像を引っ張ってくることがあるからです。
画像は、AIが読み取る「情報」であり、ユーザーの目を引く「看板」です。ここにコストをかけることは、SGE対策において最も費用対効果の高い投資の一つと言えるでしょう。
関連資料:今日から始める!SEOで検索順位を上げるためのステップガイド
6. ゼロクリックでもブランド認知を取る戦略
「クリックされない=価値がない」という考え方は、SGE時代において最も捨て去るべき古い固定観念かもしれません。検索結果画面(SERPs)上で、ユーザーがあなたのサイト名やブランド名を目にし、AIが生成した回答の中で「信頼できる情報源」として紹介されている。この事実だけでも、マーケティング的には巨大な価値があるからです。
これを私は「SERP占有率(Share of SERP)」から「マインドシェア(Share of Mind)」への転換と呼んでいます。
例えば、あなたが「高機能なオフィスチェア」を探しているとします。検索結果のAI回答に「腰痛対策なら、エルゴヒューマンやアーロンチェアが有名ですが、最近では〇〇社のチェアもコスパの高さで注目されています」と書かれていたらどうでしょう。その場ではクリックしなくても、「〇〇社」という名前は記憶に残ります。そして後日、Amazonや楽天で指名検索をする可能性が高まります。
ゼロクリック検索が常態化する中で、クリック数(Traffic)を追うのではなく、検索画面上での露出(Impression)を「デジタル看板」として捉え直す戦略が必要です。この「読まれるだけで価値がある状態」を作るためには、以下の3つの要素をコンテンツに組み込むことが有効です。
- ブランド名の明記:
記事の中の主語を「私たち」や「当社」にするのではなく、具体的な「サービス名」や「社名」に置き換えます。AIが要約する際、「〇〇社によると~」と引用されやすくなり、ユーザーの目にブランド名が触れる回数が増えます。 - 独自メソッドの命名:
一般的なノウハウではなく、自社独自の理論や手法にキャッチーな名前を付けます(例:「3ステップ集客法」ではなく「トリプル・ファネル・システム」など)。AIは固有名称をそのまま引用する傾向があるため、他社との差別化が明確になります。 - 権威あるデータの提供:
「2024年上半期調査」のようなデータを発信することで、AI回答の「出典元」としてリンクカード付きで表示される確率が高まります。リンクカードにはファビコンとサイト名が表示されるため、視覚的な認知効果が抜群です。
この戦略の成否を測る指標も変える必要があります。PV数だけでなく、指名検索数(Brand Search Volume)の推移を追うのです。SGEでの露出が増えれば、タイムラグを経て必ず指名検索が増加します。ゼロクリックを恐れるのではなく、それを「無料の広告枠」として使い倒す図太さが、これからのマーケターには求められます。
7. 指名検索につなげるためのフック作り
ゼロクリック対策の究極のゴールは、ユーザーに「次はAIに聞くのではなく、直接このサイトに来よう」と思わせることです。つまり、SGEでの接触をきっかけに、次回以降の「指名検索(Navigational Query)」を誘発する仕掛け(フック)を作ることです。
AIは「正解」を教えるのは得意ですが、「物語」や「継続的な関係性」を作ることはできません。ここに、人間が運営するメディアの勝機があります。AIの回答を見たユーザーが、「この情報の続きは、この人から聞かないと気が済まない」と感じるようなフックを用意しましょう。
私が実践して効果が高かった「指名検索を増やすフック」には、以下のようなパターンがあります。
| フックの種類 | 具体的な施策内容 | ユーザーの心理変容 |
|---|---|---|
| 未完のストーリー | 記事内で現在進行形のプロジェクトや検証実験について触れ、「結果は来月の記事で報告します」と予告する。 | 「結果が気になるから、またこのブログを見に来よう」という再訪動機が生まれる。 |
| 限定リソースの配布 | AIでは再現できない「オリジナルの計算シート」や「チェックリスト(PDF)」を配布し、そのツール名を記事内で強調する。 | 「あの便利なシートがあったサイト」として記憶され、ツール名での指名検索が発生する。 |
| 強烈なキャラクター | 筆者の個性、失敗談、偏愛ぶりを前面に出し、「このジャンルのオタク」としてのポジションを確立する。 | 「情報の正しさ」ではなく「この人の意見」が欲しくなり、筆者名で検索されるようになる。 |
特に強力なのが「オリジナルツール」の提供です。例えば、私が支援した不動産メディアでは、「AI診断」という簡易的な計算ツールを作成し、記事内で紹介しました。すると、SGEで一般的な知識を得たユーザーが、具体的な計算をするために「〇〇不動産 AI診断」と指名検索して戻ってくる現象が起きました。
AIは「情報」を渡すことはできても、「道具」を渡すことはできません。ユーザーの課題解決に必要な「道具(ツール・テンプレート・素材)」を独自に開発し、それをフックにすることで、SGEという情報の海から、自社の港へとユーザーを確実に誘導することができるのです。
関連記事:これからSEOを始める人が押さえておきたい必須知識と手順
8. インプレッション数と実際の流入の乖離分析
SGEの導入以降、Search Console(サーチコンソール)のデータを見て首をかしげる担当者が増えています。「表示回数(インプレッション)は増えているのに、クリック数が横ばい、あるいは減っている」という現象です。
これは、SGEのスナップショットが表示された際に、あなたのサイトが「リンクカード」として表示されているものの、クリックされていない(ゼロクリック)か、あるいはSGEの下に追いやられた自然検索枠で表示カウントだけが回っている可能性があります。
この「乖離(ギャップ)」を正確に分析することが、CTR改善の第一歩です。闇雲にリライトするのではなく、どのクエリで「AIに負けているのか」を特定する必要があります。
私が推奨する分析手順は以下の通りです。
- 乖離クエリの特定:
Search Consoleで、過去3ヶ月と比較して「掲載順位は変わらない(または上がった)のに、CTRが極端に下がったクエリ」を抽出します。これがSGEの影響を強く受けている「被弾クエリ」の可能性が高いです。 - SERPsの目視確認:
特定したクエリで実際に検索してみます(シークレットモード推奨)。SGEが自動展開されているか、自分のサイトがSGE内に引用されているか、それともSGEの下に埋もれているかを確認します。 - タイプ別対策の実行:
状況に応じて対策を打ち分けます。
| 状況 | 分析結果 | 推奨アクション |
|---|---|---|
| SGEに引用されているがCTRが低い | 認知は取れているが、クリックする魅力が不足している。 | タイトルやサムネイル画像を「もっと詳しく知りたい」と思わせるクリエイティブに変更する(前述の「情報の欠落」テクニック)。 |
| SGEに引用されず、下部に表示 | ファーストビューから押し出され、視認性が低下している。 | 構造化データを見直し、SGEの引用枠(リンクカード)への採用を狙うリライトを行う。 |
| SGEが表示されないクエリ | AIが苦手とする領域(リアルタイム情報や主観など)。 | ここが稼ぎ時。SEOの王道対策を強化し、確実に1位を取りに行く。 |
「インプレッションの無駄遣い」を嘆くのではなく、それを「SGEとの接触データ」として活用しましょう。乖離が大きいクエリこそ、AIがまだユーザーを満足させきれていない、あるいはあなたのサイトがAIにとって有力なソース候補になっている証拠でもあります。ここをテコ入れすることで、失った流入を取り戻す最大のチャンスになります。
参考ページ:SEO初心者でも大丈夫!検索上位表示のための完全ロードマップ
9. ユーザーの「次の行動」を予測した導線
SGE環境下であなたのサイトをクリックしてくれたユーザーは、AIの回答では満足できなかった「意識の高いユーザー」です。彼らは「一般的な正解」はすでに知っています。そんな彼らに対して、また最初から「〇〇とは~」という基礎知識を解説するのは、これ以上ない機会損失です。
CTR改善の先にあるのは、訪問したユーザーを逃さないためのLPO(ランディングページ最適化)です。SGEからの流入ユーザーに対しては、「答え合わせ」ではなく「次のアクション」を即座に提示する必要があります。
ユーザーが検索画面から遷移してきた瞬間に、「そうそう、これが知りたかったんだ!」と思わせるコンテンツ配置、それを私は「ネクスト・アクション・ファースト」と呼んでいます。
具体的には、リード文の直後に以下のような要素を配置します。
- ダウンロード可能な資料: 「AIが解説した手順のチェックリスト(PDF)はこちら」
- 具体的な事例集: 「この理論を実践して成功したAさんの事例写真」
- 専門家への相談窓口: 「AIの回答で解決しなかった場合は、プロに無料相談」
AIは「知識」を提供しますが、ユーザーが本当に欲しいのは、その知識を使って問題を解決する「結果」です。サイトに訪れるユーザーは、知識の習得フェーズを終え、実践フェーズに入ろうとしています。
例えば、「確定申告 やり方」で検索してSGEを見た後にサイトに来た人は、もうやり方の概要は分かっています。彼らが欲しいのは「自分のケースでも使える入力フォーマット」や「税理士への依頼費用見積もり」かもしれません。
記事の構成も、これまでの「起承転結」から、「結論→事例→ツール(解決策)」という実務的な流れに変えていくべきです。「AIが教えてくれない具体的な解決策」がファーストビューにあること。これこそが、SGE時代のWebサイトに求められる最大の価値であり、直帰率を下げコンバージョン率を高める唯一の方法です。
付随記事:SEOでビジネスを加速!効果的な集客を実現する戦略的アプローチ
10. SGE環境下での新しいKPI設定
最後に、これらの施策を評価するための「物差し(KPI)」についてお話しします。SGE時代に「セッション数(流入数)」だけをKPIに設定し続けるのは危険です。ゼロクリックの影響でセッション数が減るのは避けられないトレンドだからです。
「数が減ったから失敗だ」と判断して予算を縮小してしまうと、AI時代に適応するチャンスを自ら捨てることになります。流入の「量」が減る分、「質」への転換を評価指標に組み込む必要があります。
私がクライアントに提案している「SGE時代の新KPIセット」は以下の通りです。
| 指標カテゴリ | 旧KPI (SEO時代) | 新KPI (SGE時代) | 設定の意図 |
|---|---|---|---|
| 集客力 | セッション数 / PV数 | 指名検索数 / SGE露出数 | ゼロクリックを含めた「ブランド認知」と「ロイヤリティ」を評価するため。 |
| エンゲージメント | 滞在時間 / 直帰率 | 読了率 / スクロール深度 | AI要約以上の情報を求めて来たユーザーが、本当に記事を深く読んでいるかを測る。 |
| 成果 | CV数 (コンバージョン数) | CVR (コンバージョン率) | 流入数が減っても、質の高いユーザーが来ていればCVRは向上するはず。ここを正当に評価する。 |
特に注目すべきは「CVR(コンバージョン率)」です。私の経験上、SGE導入後にセッションが2割減っても、売上が変わらない(むしろ微増する)ケースは多々あります。これは、購買意欲のない「調べ物ユーザー」がSGEで満足して帰ってくれたおかげで、Webサーバーの負荷が減り、営業チームの対応工数も最適化された結果とも言えます。
「アクセスが減った!」とパニックになる前に、コンバージョン率や指名検索の推移を見てください。もしそこが堅調なら、あなたのサイトはSGE時代に見事に適応できています。表面的な数字に惑わされず、ビジネスの本質的な貢献度を測る視点を持つことが、これからのWeb担当者の責務です。
AIと共存し、選ばれるメディアになるために
SGE時代のゼロクリック検索とCTR改善策について、ユーザー心理の理解から具体的な施策、そしてKPIの見直しまで、多角的に解説してきました。
この記事で最もお伝えしたかったことは、「ゼロクリックは『拒絶』ではなく、ユーザーの『選別』である」という事実です。AIは、情報の浅いユーザーをその場で満足させ、情報の深いユーザーだけをあなたのサイトへ送り届けるフィルターの役割を果たしています。流入数は減るかもしれませんが、その分、濃度の高い見込み客との出会いが増えるのです。
読者の皆様に明日から実践していただきたい具体的なアクションは以下の2つです。
- Search Consoleで「表示回数は多いがクリック率が低い」クエリを見つけ、その記事のタイトルに「実体験」や「逆説」の要素を加えてリライトする。(AI回答との差別化)
- 記事のアイキャッチ画像を、フリー素材ではなく「記事内容を要約した図解」や「独自のデータ画像」に差し替える。(SGEリンクカードでのクリック誘発)
AIは便利なツールですが、人の心を動かす「体験」や「物語」を生み出すことはまだできません。AIが標準的な答えを出してくれるからこそ、私たち人間はより深く、より独自の価値を提供することに集中できます。変化をチャンスと捉え、AIには真似できないあなただけのメディアを育てていってください。
関連ニュース:SEOの常識を覆す!最新アルゴリズムに対応したSEO対策

執筆者
畔栁 洋志
株式会社TROBZ 代表取締役
愛知県岡崎市出身。大学卒業後、タイ・バンコクに渡り日本人学校で3年間従事。帰国後はデジタルマーケティングのベンチャー企業に参画し、新規部署の立ち上げや事業開発に携わる。2024年に株式会社TROBZを創業しLocina MEOやフォーカスSEOをリリース。SEO検定1級保有
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