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2025/11/3
Web広告の始め方完全ガイド|TROBZが教える初心者向け出稿マニュアル
「自社の商品やサービスをもっと多くの人に知ってもらいたい」
「Web広告に興味はあるけれど、何から手をつければいいか分からない…」
「過去に試してみたが、効果が出ずに予算だけが溶けてしまった…」
現代のビジネスにおいて、Web広告は顧客にアプローチするための強力な手段です。しかし、その種類の多さや専門用語の難しさから、最初の一歩を踏み出せずにいる方も多いのではないでしょうか。あるいは、見切り発車で始めてしまい、思うような成果が得られなかった苦い経験をお持ちかもしれません。
私自身、Webマーケティング支援の現場(TROBZ)で、数多くのクライアント様の広告運用に携わってきましたが、「なんとなく」で始めて成功するほど甘い世界でないことも事実です。成功と失敗を分けるのは、センスや運ではなく、「正しい手順に基づいた戦略」を知っているかどうか。これに尽きます。
ここでは、Web広告の基本的な仕組みから、初心者の方がつまずきがちな予算の考え方、具体的な出稿手順、そして配信後の分析方法まで、「これさえ読めば、初心者でもWeb広告の全体像が掴め、最初の一歩を自信を持って踏み出せる」ことを目標に、現場のリアルな視点を交えながら徹底的に解説します。
目次
1. Web広告とは?その種類と基本的な仕組み
まず「Web広告」とは何か、その定義からおさらいしましょう。一言でいえば、「インターネット上のさまざまなメディア(Webサイト、SNS、検索エンジンなど)に掲載される広告」の総称です。
テレビCMや新聞広告といった従来のマス広告と何が決定的に違うのでしょうか? 主な違いは以下の3点です。
- 精緻なターゲティングが可能:
年齢や性別、地域はもちろん、「過去に〇〇に興味を持った人」「特定のキーワードを検索した人」など、非常に細かい単位で広告を届けたい相手を絞り込めます。
- 効果測定が容易かつ正確:
「何人が広告を見て、何人がクリックし、そのうち何人が商品を購入したか」といったデータを、ほぼリアルタイムで正確に把握できます。
- 低予算から始められる:
マス広告のように数百万円単位の予算が必須ではなく、極端な話、1日1,000円といった少額からでもテスト的に出稿が可能です。
まさに「必要な相手に必要な情報を、適切なコストで届ける」ことができるのが、Web広告の最大の強みです。
Web広告には非常に多くの種類がありますが、初心者がまず押さえるべき代表的なものを4つ紹介します。広告の「目的」によって、使い分けることが重要です。
| 広告の種類 | 主な掲載場所 | 主な特徴と得意分野 |
|---|---|---|
| 1. リスティング広告 (検索連動型広告) |
GoogleやYahoo!の検索結果画面 | 「今、悩みを解決したい」と検索している顕在層に直接アプローチできる。最も成果に繋がりやすい広告の一つ。 |
| 2. ディスプレイ広告 | Webサイトやアプリ内の広告枠 | 画像や動画(バナー)で視覚的に訴求。特定の層(例:過去にサイトに来た人)に広く配信し、認知拡大や再アプローチ(リターゲティング)が得意。 |
| 3. SNS広告 | Facebook, Instagram, X (旧Twitter), LINEなど | SNSのタイムラインに自然に溶け込む形で配信。精度の高いターゲティングで、潜在層への興味喚起やファン化が得意。 |
| 4. 動画広告 | YouTube, TikTok, 各SNSなど | 映像と音声で、テキストや画像より圧倒的に多くの情報量を伝えられる。ブランディングや商品の利用シーン訴求に強い。 |
基本的な仕組み:オークションと課金形態
Web広告の多くは、広告枠が「オークション(入札)」によって決まります。広告主は「このターゲット層に、このくらいの金額(入札単価)で広告を出したい」と設定し、競合他社との入札競争を経て、掲載順位や可否が決まる仕組みです。
また、広告費用の発生の仕方も様々です。ここを理解しておかないと、「クリックもされていないのに費用だけがかかる」といった事態になりかねません。
| 課金形態 | 名称 | 費用の発生タイミング |
|---|---|---|
| クリック課金 | CPC (Cost Per Click) | 広告がクリックされた時。リスティング広告や多くのSNS広告で採用。 |
| インプレッション課金 | CPM (Cost Per Mille) | 広告が1,000回表示されるごと。ディスプレイ広告や認知目的のSNS広告で採用。 |
| 成果報酬課金 | CPA (Cost Per Action) | 商品購入や資料請求など、あらかじめ設定した成果(CV)が発生した時。(※一部の媒体やASP広告で採用) |
| 視聴課金 | CPV (Cost Per View) | 動画広告が一定時間(または最後まで)視聴された時。YouTube広告などで採用。 |
初心者のうちは、費用対効果が分かりやすい「クリック課金(CPC)」から始めるのが一般的です。
2. 広告出稿の前に決めるべき目的とターゲット
Web広告の成否は、実際に出稿作業を始める「前」に、ほぼ8割が決まっています。
私が支援の現場で最も時間をかけるのが、この「目的」と「ターゲット」の明確化です。ここが曖昧なまま「とりあえずリスティング広告を出してみましょう」と進めても、まず間違いなく失敗します。なぜなら、誰に・何を・どうなってほしいのかが決まっていなければ、どの媒体を選び、どんな言葉で語りかけるべきか、判断のしようがないからです。
目的(KGI/KPI)を明確にする
まず、「なぜ広告を出すのか?」という目的(KGI: 重要目標達成指標)を定めます。
- 例1:ECサイトの売上(購入件数)を増やしたい。
- 例2:BtoBサービスの資料請求(リード獲得数)を増やしたい。
- 例3:新商品の認知度(サイト訪問者数、動画再生数)を高めたい。
目的が定まったら、それを計測可能な具体的な数値目標、KPI(重要業績評価指標)に落とし込みます。
- KGIが「売上」なら、KPIは「購入件数」「CPA(顧客獲得単価)」「ROAS(広告費用対効果)」
- KGIが「リード獲得」なら、KPIは「資料請求数」「CPA」「CVR(コンバージョン率)」
- KGIが「認知拡大」なら、KPIは「インプレッション数」「クリック数」「CPC(クリック単価)」
特に「獲得(購入・問合せ)」が目的なのか、「認知(知ってもらう)」が目的なのかは明確に分けてください。「獲得」ならリスティング広告やSNSのリターゲティングが、「認知」ならSNS広告や動画広告が適しているなど、選ぶべき手法が全く変わってきます。
ターゲット(ペルソナ)を具体化する
次に、「その広告を誰に届けたいのか?」というターゲットを、解像度高く設定します。
「30代の女性」といった大雑把なものではいけません。理想の顧客像である「ペルソナ」を、まるで実在する一人の人物のように具体化します。
- デモグラフィック(属性):
年齢(例:35歳)、性別(女性)、居住地(東京都世田谷区)、職業(中小企業のマーケティング担当)、役職(マネージャー)、家族構成(夫と子供1人)
- サイコグラフィック(内面):
悩み(Web広告の運用を任されたが、ノウハウがなく成果が出ない)、価値観(効率性より本質的な成果を重視する)、情報収集(Webメディア、X(旧Twitter))、趣味(週末はカフェ巡り)
(私の経験談ですが)以前、あるBtoBツールの広告運用で、「ターゲットは中小企業の経営者」と広く設定して失敗したことがあります。成果が出ないため改めて分析したところ、本当に反応していたのは「経営者」ではなく、「現場の経理担当者」だったことが判明しました。ペルソナを「経理担当者のAさん」に設定し直し、彼女が検索しそうなキーワード(例:請求書処理 効率化)や、彼女が刺さるであろうクリエイティブ(例:面倒な作業から解放!)に変更した途端、CPA(獲得単価)が劇的に改善しました。
この「たった一人」のペルソナに深く刺さるように設計することが、結果として多くの人に届く広告を作る最短ルートです。
3. 主要な広告媒体(Google, Meta)の特徴と比較
Web広告媒体は無数にありますが、初心者がまず検討すべきは、圧倒的なシェアを誇る「Google広告」と「Meta広告」の2強です。
Google広告(リスティング、ディスプレイ、YouTube)
- 特徴:
世界最大の検索エンジンGoogleが提供するプラットフォームです。「検索広告(リスティング)」「ディスプレイ広告(GDN)」「YouTube広告」など、多岐にわたる配信面を持っています。
- 最大の強み:
「検索広告」による、購買意欲が非常に高い「顕在層」へのアプローチです。「〇〇 おすすめ」「〇〇 料金」といった「今すぐ客」を捉えられるのは、他の媒体にはない大きな強みです。
- 得意な領域:
顕在層の刈り取り(コンバージョン獲得)。特にBtoBサービスや、緊急性の高い悩み(例:水漏れ 修理)などと相性が良いです。
Meta広告(Facebook, Instagram)
- 特徴:
FacebookとInstagramという、巨大SNSプラットフォームに配信できる広告です。
- 最大の強み:
Facebookの実名登録情報や、Instagramでの「いいね」「フォロー」といった行動履歴に基づく、圧倒的に高精度なターゲティングです。デモグラフィック(年齢・性別・地域・職業など)や興味関心(例:「旅行好き」「美容に興味がある」)で、狙った層にピンポイントで配信できます。
- 得意な領域:
「まだ自分たちの商品を知らない」という「潜在層」へのアプローチ。ビジュアル(画像・動画)での訴求が得意で、アパレル、コスメ、食品、アプリなど、世界観や見た目の魅力が重要な商材と非常に相性が良いです。
「どちらが優れているか」ではなく、「自社の目的とターゲットに合っているのはどちらか」で選びます。両者の違いを理解するために、以下の比較表を参考にしてください。
| 比較項目 | Google広告 | Meta広告 |
|---|---|---|
| 主な配信面 | Google検索結果、提携サイト(GDN)、YouTube | Facebook, Instagram, Messenger |
| 得意なターゲット層 | 顕在層(今、悩みや欲求がある人) | 潜在層(まだ悩みや欲求に気づいていない人) |
| アプローチ手法 | 検索キーワード(能動的) | ターゲティング(受動的・プッシュ型) |
| 主な強み | コンバージョン(成果)の獲得力 | ターゲティング精度、認知拡大、ブランディング |
| 向いている商材(例) | BtoBサービス、専門サービス、緊急性の高い商材 | アパレル、コスメ、食品、アプリ、イベント |
(TROBZとしての見解ですが)もし予算に限りがある初心者が「まず成果(問合せや購入)が欲しい」のであれば、Googleのリスティング広告から始めるのが王道です。一方で、ビジュアルで訴求できる商材の「認知を広げたい」のであれば、Meta広告から入るのも良い戦略です。
4. 初めての広告予算の考え方と決め方
「で、結局いくら必要なの?」というのは、初心者が最も悩むポイントでしょう。Web広告の良いところは、「低予算からでも始められる」点です。月額数万円からでも十分テストは可能です。
予算の決め方には、大きく分けて2つのアプローチがあります。
1. 目標CPA(顧客獲得単価)から逆算する方法
これは、「1件の成果(購入や問合せ)に対して、いくらまで広告費を払えるか」を基準に考える、理想的な方法です。
必要な広告予算 = 目標CPA × 目標獲得件数(CV数)
例えば、1件売れると10,000円の利益が出る商品があり、そのうち広告費として5,000円までかけられる(=目標CPA 5,000円)とします。月に20件獲得したい場合、
5,000円(目標CPA) × 20件(目標CV数) = 100,000円(必要な月額予算)
となります。この「目標CPA」の設定が肝心です。多くのビジネスでは、LTV(顧客生涯価値)から逆算して考えます。例えば、顧客がリピートして生涯で平均50,000円の利益をもたらしてくれるなら、最初の1件を獲得するために10,000円の広告費(CPA)をかけても、長期的には利益が出ると判断できます。
2. テスト可能な金額から決める方法
とはいえ、始めたばかりの頃は「自社のCPAがいくらになるか」の相場観すらないのが普通です。私自身、新しいクライアントの支援に入る際は、まずテストから入ります。
その場合は、「まずはこの金額まで」と、テストマーケティング費用として割り切れる金額を決めてしまいましょう。
- 例:月額3万円(日予算1,000円)
- 例:月額10万円(日予算 約3,300円)
重要なのは、最初から大きな予算を投じないこと。Web広告は「データ」が命です。まずは少額で配信して「自社の商材は、どの媒体で、どんなキーワード(オーディエンス)に、いくらくらいのCPAで売れるのか」というデータを取ることを最優先の目的にします。
そのテストデータ(例:CPAが7,000円だった)を基に、改めてアプローチ1の方法で本格的な予算を組んでいく。この「スモールスタート」こそが、初心者にとって最も安全で確実な進め方です。
5. 広告アカウントの開設から初期設定まで
目的、ターゲット、媒体、予算が決まったら、いよいよ実作業です。ここでは、広告を配信するための「器」を準備します。
手順は媒体によって異なりますが、大まかな流れは共通しています。
- 1. 広告アカウントの開設
Google広告もMeta広告(Facebookビジネスマネージャ)も、基本的には画面の指示に従ってメールアドレスや基本情報を登録すれば開設できます。この段階では費用はかかりません。
- 2. 支払い情報の設定
広告費を支払うためのクレジットカード情報を登録します。法人の場合は請求書払いを選択できることもあります。
- 3. コンバージョンタグ(CVタグ)の設置
これが初心者が最初につまずく、しかし最も重要な設定です。
コンバージョンタグとは、「広告をクリックした人が、サンクスページ(購入完了ページや資料請求完了ページ)に到達したか」を計測するための特殊なコードです。
(現場の言葉で言えば)CVタグを設置せずに広告を出すのは、「真っ暗闇の中を目隠しで運転する」のと同じです。いくら広告費を使っても、どれが成果に繋がったのか一切分からず、改善のしようがありません。
各媒体の管理画面からタグを発行し、自社サイトの対象ページ(サンクスページなど)のHTMLに埋め込みます。難しい場合は、Googleタグマネージャー(GTM)というツールを使うと、比較的簡単に管理できます。
- 4. キャンペーンの作成
アカウント内に、広告の「目的」別のフォルダ(=キャンペーン)を作成します。
Google広告なら「検索」「ディスプレイ」、Meta広告なら「トラフィック」「コンバージョン」「認知度向上」など、最初に設定した「広告の目的(KGI/KPI)」に合ったキャンペーンタイプを選択します。
特に「3. CVタグの設定」は、難しくても必ず最初に行ってください。ここを飛ばしてはいけません。
6. キーワードやオーディエンスの基本的な選定方法
次に、作成したキャンペーンの中に、「誰に」広告を配信するかを設定していきます。Google(リスティング)では「キーワード」、Meta(SNS)では「オーディエンス」が中心となります。
Googleリスティング広告:キーワード選定
検索広告は、ユーザーが検索する「キーワード」に対して広告を表示します。
- 1. 軸キーワードの洗い出し
まずは自社の商品やサービスを直接表すメインのキーワードを洗い出します。(例:Web広告 代理店, マーケティング 支援)
- 2. 掛け合わせキーワードの展開
軸キーワードに、ユーザーが一緒に検索しそうなサブキーワードを掛け合わせます。
- 悩み系:「Web広告 代理店 効果ない」
- ニーズ系:「Web広告 代理店 おすすめ」「Web広告 代理店 初心者」
- 地域系:「Web広告 代理店 東京」
(経験則ですが)この時、「社内用語」ではなく「お客様が実際に使う言葉」で考えることが非常に重要です。
- 3. マッチタイプの設定
キーワードをどの程度「一致」させるかを設定します。「部分一致」「フレーズ一致」「完全一致」がありますが、初心者の場合は、ある程度の柔軟性と精度を両立できる「フレーズ一致」(設定した語句と同じ順序で含む場合に表示)から始めるのがおすすめです。
- 4. 除外キーワードの設定
広告を表示「させたくない」キーワードを設定します。これが非常に重要です。(例:「Web広告 代理店 求人」「Web広告 代理店 とは」)。これを設定しないと、見込み客ではないユーザーに無駄なクリックをされ、予算を浪費してしまいます。
Meta広告:オーディエンス選定
SNS広告は、「人」に対して配信します。主なオーディエンス設定は3種類です。
- 1. コアオーディエンス
最も基本的な設定です。年齢、性別、地域といったデモグラフィック情報と、「興味・関心」(例:「美容」「投資」「アウトドア」など)、「行動」(例:過去に海外旅行をした人)などを組み合わせて、ターゲット層を直接指定します。
(例:東京都在住、30〜45歳の女性、かつ「オーガニックコスメ」に興味がある人)
- 2. カスタムオーディエンス
自社が既に接点を持っているユーザーリストです。非常に強力です。
- サイト訪問者(例:過去30日以内にサイトに来たが、購入しなかった人)← リターゲティング広告に使います。
- 既存顧客のメールアドレスリスト
- Instagramで「いいね」や「保存」をした人
- 3. 類似オーディエンス(Lookalike Audience)
Meta広告の「AI」が真価を発揮する機能です。
「2. カスタムオーディエンス」(例:優良顧客リスト)をAIに学習させ、「その人たちと“似ている”行動特性を持つ、新しいユーザー」を自動で見つけて広告を配信してくれます。新規顧客獲得において非常に効果的な手法です。
最初は「1. コアオーディエンス」から始め、データが溜まってきたら「2. カスタム(リターゲティング)」や「3. 類似」に広げていくのが王道です。
7. 初めての広告クリエイティブ作成のコツ
クリエイティブ(広告文やバナー画像・動画)は、ユーザーが直接目にする、広告の「顔」です。ここが魅力的でなければ、いくらターゲティングが完璧でもクリックされません。
リスティング広告(テキスト)のコツ
検索結果の画面では、競合他社と「テキスト」だけで勝負します。
- 見出しに「検索キーワード」を含める
ユーザーが検索した語句が広告文に含まれていると、太字で表示され、目立ちます。「自分に関係がある」と認識されやすくなります。
- 数字や権威性を入れる
「満足度98%」「導入実績500社」「3分で完了」など、具体的で客観的な数字は、信頼性を高め、クリックを後押しします。
- CTA(行動喚起)を明確にする
「今すぐ無料相談」「資料請求はこちら」「限定セール中」など、ユーザーに「次にしてほしい行動」を明確に示します。
SNS広告(バナー・動画)のコツ
SNSは「暇つぶし」で見ているユーザーが多いため、「いかに指を止めてもらうか」が勝負です。
- ファーストビュー(最初の1秒)で掴む
(私の経験上)ユーザーは0.5秒以下で、その投稿を見るか・飛ばすかを判断しています。動画なら冒頭の1秒、画像ならパッと見のインパクトが全てです。
- 「広告っぽさ」を消す(UGC風)
作り込まれた「ザ・広告」といったデザインは、SNS上では敬遠されがちです。むしろ、一般ユーザーの投稿(UGC)のように見える、リアルな使用感のある写真や、「手書き風のテキスト」の方が、CTR(クリック率)が高いケースが多々あります。
- A/Bテストを徹底する
クリエイティブは「水物」です。作り手の「これがイケるはず」という予想は、驚くほど外れます。必ず最低でも2〜3パターンの画像やキャッチコピーを用意し、どれが最も反応(CTR)が良いかをテストしましょう。
良いクリエイティブと悪いクリエイティブの違いをまとめます。
| 項目 | 良いクリエイティブ(例) | 悪いクリエイティブ(例) |
|---|---|---|
| ターゲットへの呼びかけ | 「Web広告の成果が出ずにお悩みの担当者様へ」 | 「今、注目のマーケティング手法!」 |
| ベネフィット(便益) | 「無駄な広告費を30%削減した事例あり」 | 「高機能な分析ツール搭載」 |
| 具体性(数字) | 「専門家が3営業日以内にご返信」 | 「迅速な対応」 |
| CTA(行動喚起) | 「今すぐ無料診断を試してみる」 | (CTAが明確でない) |
8. 広告の配信結果の基本的な見方
広告は「配信してからがスタート」です。配信結果のデータ(数字)を読み解き、改善を繰り返す(PDCAを回す)ことこそが、Web広告の本質です。
管理画面には多くの指標が並びますが、初心者がまず見るべき「主要な指標」を解説します。
- インプレッション(表示回数):
広告がどれだけユーザーの画面に表示されたか。
- クリック数:
広告がどれだけクリックされたか。
- CTR (Click Through Rate / クリック率):
計算式: (クリック数 ÷ 表示回数) × 100%
広告クリエイティブやキーワードが、ターゲットに刺さっているかを示す魅力度の指標。CTRが低い場合、クリエイティブやキーワードの見直しが必要です。
- CPC (Cost Per Click / クリック単価):
計算式: (総広告費 ÷ クリック数)
1クリック獲得するのにかかったコスト。低ければ低いほど効率が良いとされます。
- CV (Conversion / コンバージョン):
広告の「成果」(商品購入、資料請求など)。
- CVR (Conversion Rate / コンバージョン率):
計算式: (CV数 ÷ クリック数) × 100%
クリックした人のうち、どれだけが成果に至ったか。広告のリンク先ページ(LP)の質を示す指標。CVRが低い場合、LPの改善が必要です。
- CPA (Cost Per Action / 顧客獲得単価):
計算式: (総広告費 ÷ CV数)
1件の成果を獲得するためにかかったコスト。これが、事前に決めた「目標CPA」を下回っているかどうかが、広告の成否を判断する最大の基準です。
(現場でのアドバイスですが)初心者のうちは、毎日数字を見て一喜一憂しがちです。しかし、Web広告のデータは、ある程度の期間(最低でも1週間、できれば2週間〜1ヶ月)が蓄積しないと、正しい判断ができません。「CTRが低いから、クリエイティブを改善しよう」「CVRが低いから、LPの申し込みフォームを修正しよう」といった仮説を立て、A/Bテストを繰り返していくことが成果への道です。
9. よくある失敗例と成功への近道
TROBZとして多くの企業様を見てきた中で、初心者が陥りがちな「典型的な失敗パターン」と、それを回避して成功に近づくためのマインドセットを紹介します。
よくある失敗例
- 目的・ターゲットが曖昧なまま始める
「流行っているからMeta広告を出そう」と手段から入ってしまう。結果、誰にも響かない広告になり、予算だけが消化されます。
- コンバージョンタグ(CVタグ)を設置しない
前述の通り、成果計測をしないまま配信するケース。何が良くて何が悪かったのか、分析が一切できず、改善もできません。
- 「配信しっぱなし」で放置する
Web広告は「自動販売機」ではありません。設定して終わりではなく、日々の数値チェックと改善が必要です。放置すれば、無駄なキーワードや反応の悪いクリエイティブに予算が流れ続けます。
- ランディングページ(LP)が最適化されていない
CTRが高く、広告は優秀なのに、CVRが極端に低いケース。原因はリンク先のLPにあります。広告の訴求内容とLPの内容がズレていたり、フォームが使いにくかったりすると、ユーザーは即離脱します。
- 最初から大きな予算を投じすぎる
テスト不足のまま「これでいけるはず」と大きな予算をかけ、CPAが高騰して大失敗。「Web広告は効果がない」という誤った結論に至ってしまいます。
成功への近道
これらの失敗を避けるために、以下の3つを心がけてください。
- 1. スモールスタート&クイックPDCA
常に「少額の予算でテストする」意識を持ちます。データ(結果)が出たら、すぐに分析し、改善(次のテスト)を行います。このサイクル(PDCA)をどれだけ速く回せるかが勝負です。
- 2. A/Bテストを「文化」にする
「正解は市場(データ)だけが知っている」というスタンスが重要です。クリエイティブ、キャッチコピー、キーワード、LPのデザインなど、常に「A案とB案、どちらがより高い成果(CVRやCTR)を出すか」をテストし続ける文化を作ります。
- 3. ユーザー目線(ペルソナ)に立ち返る
数字(データ)を追っていると、いつの間にか「画面の向こう側にいる生身の人間」の存在を忘れがちです。「あのペルソナ(ターゲット)は、今、何に悩んでいて、どんな言葉をかけられたら心が動くか?」と、常に出発点に立ち返ることが、本質的な改善に繋がります。
10. 広告代理店に相談するメリットとは
ここまで自社で運用する(インハウス)前提で話を進めてきましたが、「リソースが足りない」「専門知識がなくて不安」という場合は、Web広告の専門家である広告代理店に相談するのも有効な選択肢です。
代理店に依頼する主なメリット
- 1. 専門知識と最新ノウハウの活用
広告媒体の仕様変更(アルゴリズムのアップデート)は非常に頻繁です。代理店は、最新の情報を常にキャッチアップしており、他業種も含めた豊富な成功事例(ノウハウ)を持っています。
- 2. リソース(工数)の削減
日々の入札調整、キーワードの追加・除外、クリエイティブのA/Bテスト、レポート作成など、広告運用は非常に手間がかかります。これらを専門家に任せることで、自社の社員は「本来の業務(商品開発や顧客対応など)」に集中できます。
- 3. 客観的な視点での分析
自社で運用していると、どうしても「この商品はこうあるべきだ」という思い込み(バイアス)が邪魔をすることがあります。代理店という第三者の客観的な視点が入ることで、市場から見た自社の本当の強みや、ボトルネック(課題)が明確になることがあります。
代理店選びの注意点
一方で、代理店に依頼すれば必ず成功するわけではありません。
- 運用手数料がかかる
広告費の実費とは別に、運用手数料(一般的に広告費の20%程度)が発生します。そのコストを払ってでも、自社でやる以上の成果(売上向上や工数削減)が見込めるかを判断する必要があります。
- 「丸投げ」ではノウハウが溜まらない
代理店に「全部お任せ」にしてしまうと、なぜ成果が出たのか(あるいは出なかったのか)という貴重な知見が、自社内に一切残りません。
(私達TROBZが常々心がけていることですが)理想的なのは「丸投げ」ではなく、代理店を「戦略的パートナー」と位置づけることです。自社の目的や商品知識を代理店と密に共有し、代理店は運用の専門家として伴走する。この二人三脚の関係性を築けるかどうかが、代理店活用の最大の鍵となります。
Web広告成功の鍵は「正しい戦略」と「地道な改善」
Web広告の始め方について、基本的な仕組みから具体的な戦略、失敗例までを網羅的に解説しました。
Web広告は、テレビCMなどとは異なり、低予算からでも始められる、中小企業にとって非常に強力なマーケティングツールです。しかしその一方で、「正しい戦略」なしに感覚で運用すると、あっという間に予算を失うリスクも孕んでいます。
ここで解説した内容は、いわば「Web広告というゲームのルールブック」です。最も重要なのは、「目的とターゲット」という戦略の根幹を定め、スモールスタートで「データに基づく改善(PDCA)」を地道に回し続けること。これに尽きます。クリエイティブのA/Bテスト、キーワードの精査、LPの改善。この地道な作業の積み重ねが、数ヶ月後に大きな成果の差となって現れます。
Web広告の出稿は、今や誰でもボタン一つで可能です。しかし、その先に待つ「成果」を手にするためには、正しい準備と努力が欠かせません。
まずは今日、以下の2つのアクションから始めてみてください。
- 自社の商品・サービスについて、「広告を出す目的(CV地点)」と「理想の顧客(ペルソナ)」を、具体的に紙に書き出してみる。
- そのペルソナが検索しそうな「顕在キーワード」を5つ考え、Google広告の「キーワードプランナー」で検索ボリュームを調べてみる。
その小さな一歩が、Web広告を成功させるための確実なスタートラインとなります。

執筆者
畔栁 洋志
株式会社TROBZ 代表取締役
愛知県岡崎市出身。大学卒業後、タイ・バンコクに渡り日本人学校で3年間従事。帰国後はデジタルマーケティングのベンチャー企業に参画し、新規部署の立ち上げや事業開発に携わる。2024年に株式会社TROBZを創業しLocina MEOやフォーカスSEOをリリース。SEO検定1級保有
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