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2025/11/10
プロが教える写真構図の基本10選|一瞬で写真が上手くなる
「高価な一眼レフカメラを買ったのに、なんだか写真がパッとしない」「スマートフォンで撮っても、いつも同じような“記録写真”になってしまう」… そんな風に感じたことはありませんか? 私自身、プロとして活動する前は、機材のせいにしては新しいレンズを買い漁り、「センスがないのかな」と何度も落ち込んだ経験があります。
しかし、断言します。あなたの写真が一瞬で変わらない原因は、機材やセンスのせいではありません。単に「構図」という、写真の「型」を知らないだけなのです。構図とは、画家や写真家が何世紀にもわたって培ってきた、「何をどこに配置すれば、人の目は美しさや安定感、あるいは感動を感じるか」という黄金のルール。これは「才能」ではなく、知ってさえいれば誰でも使える「技術」です。写真構図の基本を学ぶことは、料理人がレシピを学ぶのと同じ。あなたの写真表現の幅を、一瞬で、劇的に広げてくれる最強の武器となります。ここでは、私が現場で多用する、即効性の高い10の基本構図を徹底的に解説します。
目次
1. 最も基本的な「三分割法」
写真構図の世界に足を踏み入れるなら、まず最初にマスターすべき、そして最も強力な構図が「三分割法(さんぶんかつほう)」です。
これは、写真のフレーム(画面)を、縦横それぞれ3つに分割する「線」をイメージし、その線が交差する「4つの点」のいずれかに、最も見せたい主役(被写体)を配置する手法です。
多くのスマートフォンやデジタルカメラには、この三分割法のガイドラインとして「グリッド線」を表示する機能が標準搭載されています。もし「オン」にしていなければ、今すぐ設定を見直してみてください。世界が変わります。
なぜ、この構図が強力なのでしょうか?
- 視覚的なバランスが取れる:
主役をど真ん中に置くと、写真は「静止」して見えがちです。しかし、交点に少し「ズラす」だけで、写真全体に視覚的な「間(ま)」が生まれます。この「間(余白)」が、写真に安定感と心地よいリズムを生み出すのです。 - 視線を自然に誘導できる:
人間の目は、不思議とこの「交点」に注目しやすい性質があります。主役を交点に置くことで、鑑賞者の視線を「スッ」と最も見せたい場所に導くことができます。
私自身、風景写真を撮る際は、まずこの三分割法をベースに考えます。例えば、雄大な空と大地を撮る場合。
- 空を主役にしたい(例:美しい夕焼け):
水平線を「下1/3」のラインに合わせます。すると、画面の2/3が空になり、その広大さが際立ちます。 - 大地を主役にしたい(例:広がる花畑):
水平線を「上1/3」のラインに合わせます。画面の2/3が花畑になり、その奥行きと迫力が伝わります。
ポートレート(人物撮影)なら、人物の「目」を上の交点の一つに合わせる。たったこれだけの意識で、写真に「安定感」と「プロっぽさ」が宿ります。構図に迷ったら、まず三分割法。これは写真撮影における絶対の基本原則です。
| 三分割法の特徴 | 詳細 |
|---|---|
| メリット | ・写真全体のバランスが安定する。 ・主役に視線が自然に誘導される。 ・「余白」を効果的に使え、洗練された印象になる。 ・あらゆる被写体(風景、人物、物)に応用可能。 |
| デメリット / 注意点 | ・あまりに多用すると、やや「型にはまった」印象になることもある。 ・被写体によっては、あえて中央に置いた方が強い場合もある(H2-2参照)。 |
| 主な撮影シーン | ・風景写真(水平線や地平線を上1/3か下1/3の線に合わせる) ・ポートレート(人物の目を交点に合わせる) ・テーブルフォト(メインの料理を交点に置く) |
| 今すぐできる実践法 | スマートフォンのカメラ設定で「グリッド線」をオンにする。 |
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2. 奥行きと安定感を生む「日の丸構図」の応用
「え? 日の丸構図って、初心者がやりがちな“ダメな構図”じゃないの?」
そう思われた方も多いかもしれません。確かに、「日の丸構図」(被写体を画面のど真ん中に配置する構図)は、何も考えずに撮ると、背景がごちゃごちゃし、主役が引き立たない、退屈な「証明写真」のようになってしまいがちです。
しかし、プロの世界では、この日の丸構図を「意図的に」使うことで、他のどの構図よりも強く、印象的に被写体を描写するテクニックがあります。
ダメな日の丸構図と、プロが使う「応用的な日の丸構図」の違い。それは、「主役以外を徹底的に排除する」という意識があるかどうかです。
■ プロが使う「日の丸構図」の応用テクニック
- 1. 背景を徹底的にボカす
一眼レフカメラでF値(絞り)を小さく設定(F1.8など)し、背景を完全に溶かしてしまう方法です。主役(例:人物の顔)だけが中央でくっきりと浮かび上がり、背景は色と光のボケになる。こうなると、鑑賞者の視線は中央の主役に「吸い寄せられる」しかありません。 - 2. シンプルな背景を選ぶ(引き算)
背景が「青空だけ」「白い壁だけ」「広大な草原だけ」といった、非常にシンプルな場所を選ぶ方法です。ごちゃごちゃした情報がないため、中央に置かれた被写体(例:ポツンと立つ一本の木)の存在感が際立ちます。 - 3. 極端な「余白」を作る
被写体は中央に小さく配置し、その周囲に意図的に「巨大な余白」を作るテクニックです。例えば、広大な砂漠の真ん中に小さく人物を配置する。この余白(砂漠)が、中央の人物の「孤独感」や「スケール感」を強烈に演出します。
私がポートレートを撮影する際、あえてこの日の丸構図を選ぶことがあります。それは、モデルの「目力」や「表情」だけで勝負したい時です。背景をF1.4のレンズで完全に溶かし、その視線だけをファインダーのど真ん中で捉える。三分割法のような安定感とは真逆の、緊張感とインパクトを狙う構図なのです。
| 比較 | 初心者の「悪い」日の丸構図 | プロの「意図的」な日の丸構図 |
|---|---|---|
| 背景の処理 | 背景がごちゃごちゃしており、情報が多すぎる。 | 背景をボカす、またはシンプルな背景を選ぶ(引き算)。 |
| 被写体の印象 | 背景に埋もれてしまい、主役が弱い。 | 主役の存在感が際立ち、強いインパクトを与える。 |
| 写真の印象 | 退屈、静止している、素人っぽい。 | 印象的、力強い、デザイン的。 |
| 主な用途 | (意図せず)ただの記録写真。 | 被写体の表情や形そのものをストレートに伝えたい時。シンメトリーな建築物。 |
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3. 視線を誘導する「対角線構図」
写真に「動き」「ダイナミズム」「躍動感」を与えたい。もしあなたがそう思うなら、「対角線構図」をマスターすべきです。
これは、画面の「対角線(斜めのライン)」を意識して、その線上に被写体を配置したり、ラインそのものを被写体(道、川、フェンスなど)で作り出したりする構図です。
三分割法が「静」の安定感を生む構図だとすれば、対角線構図は「動」の不安定さ(良い意味での)を生む構図です。
なぜ、斜めの線は「動き」を感じさせるのでしょうか?
それは、水平線や垂直線が私たちに「重力」や「安定」を感じさせるのに対し、斜めの線は「不安定さ」や「次の瞬間への変化」を無意識に予感させるからです。
■ 対角線構図の具体的な活用例
- 1. 「道」や「川」を斜めに配置する
まっすぐ正面から撮るのではなく、少しカメラを振って、道が画面の端から端へ「斜めに抜けていく」ように撮ります。これだけで、写真に奥行き感が生まれ、鑑賞者の視線は道に沿って奥へと誘導されます。 - 2. 「動き」のある被写体を捉える
走っている人、電車、自転車などを、あえて画面に対して斜めに走るようにフレーミングします。これにより、被写体の「スピード感」が格段に強調されます。 - 3. 被写体自体を傾ける
(これは「ダッチアングル」とも呼ばれる手法ですが)カメラ自体を意図的に傾けて、水平なもの(例:建物)をあえて斜めに写すことで、写真にダイナミックな動きや、時には不安感を加えることもできます。
私がよく使うのは、街中でのスナップ撮影です。例えば、古い商店街の路地。これをただ正面から撮ると「記録」にしかなりませんが、路地が画面を斜めに横切るように対角線構図で切り取り、さらに奥から自転車が走ってくる瞬間を捉えると、「日常の中の動き」をドラマチックに表現できます。
「なんだか写真が平面的でのっぺりしてしまう」と悩んでいる人は、ぜひこの「斜め」のラインを意識してみてください。
4. 物語性を生む「フレーム構図(額縁構図)」
あなたの写真に「物語性」や「奥行き」、そして「覗き見しているような感覚」を加えたいなら、「フレーム構図(額縁構図)」が非常に効果的です。
これは、写真の中に「もう一つの枠(フレーム)」を作り、その枠(額縁)を通してメインの被写体を見せる手法です。
この「額縁」となるものは、文字通りの窓枠やドア枠に限りません。
- 人工物: 窓、ドア、アーチ、トンネル、橋げた、鏡
- 自然物: 木の枝葉、洞窟の入り口、岩の隙間
- その他: 人の腕の隙間、グラスの縁
■ フレーム構図がもたらす3つの強力な効果
- 1. 視線の強制誘導
人間の目は、自然と「枠」の内側に注目するようにできています。手前に額縁があることで、鑑賞者の視線は強制的に、その枠の中にある「主役」へと導かれます。 - 2. 強烈な「奥行き(遠近感)」の創出
「手前にある額縁」と「奥にある主役」という2つのレイヤー(層)が生まれるため、写真が2次元(平面)から3次元(立体)へと一気に深みを増します。 - 3. 物語性(ストーリー)の付加
「枠(額縁)越しに見る」という行為は、鑑賞者に「誰かの視点を追体験している」あるいは「秘密の場所を覗き見している」といった感覚を与えます。「この枠の向こう側には、どんな世界が広がっているんだろう?」と、想像力をかき立てるのです。
私がカフェで人物を撮影する際、よく使うテクニックがあります。それは、あえて外に出て、「窓ガラス越し」に店内にいるモデルを撮影することです。窓枠が「額縁」となり、窓に映り込む街の風景が「情報」として加わることで、ただ店内で撮るよりもずっとドラマチックで、その場の空気感(E-E-A-TのExperience)が伝わる写真になります。
被写体を見つけたら、一歩下がってみてください。あなたのと被写体の間に、「額縁」として使えるものはありませんか? それを見つけるのが、フレーム構図の第一歩です。
| フレーム(額縁)として使えるもの | 撮影シーンの例 | 期待できる効果 |
|---|---|---|
| 窓枠、ドア、アーチ | ・カフェの窓越しに人物を撮る。 ・トンネルの出口から光と景色を撮る。 |
奥行き感、物語性、「覗き見」感 |
| 木の枝葉 | ・手前に紅葉の枝を配置し、奥の寺院を撮る。 ・桜の枝の隙間から人物を撮る。 |
季節感の強調、視線の誘導 |
| 鏡、水たまり | ・鏡に映った被写体と、被写体自身を同時に撮る。 ・水たまりに映ったビル群を撮る。 |
非日常感、シンメトリー(H2-7)との合わせ技 |
5. 吸い込まれるような魅力「消失点構図」
写真に「圧倒的な奥行き」と「ダイナミックな集中効果」をもたらす構図、それが「消失点構図(しょうしつてんこうず)」です。
これは、美術の授業で習った「一点透視図法」を写真に応用したものです。
現実世界では平行であるはずの線(例:道や線路の両端、廊下の壁と床)が、遠くに行くにつれて、まるで画面上の一点(=消失点)に集まっていくように見える。この「収束するライン」を大胆に画面に取り入れる構図です。
この構図がなぜ強力かというと、鑑賞者の視線を「物理的」に誘導する力が非常に強いからです。
■ 消失点構図のポイント
- ラインが「ガイド」になる:
道、線路、橋、建物の列などが作り出す「線」が、鑑賞者の視線を強制的につかみ、手前から奥の「消失点」へと導くガイドラインの役割を果たします。 - 「消失点」に何を置くか:
この構図の成否は、「消失点(またはその近く)」に何を配置するかで決まります。- (例1)消失点に「人物」を小さく配置する → 視線が人物に集中し、その人物の先に広がる世界を想像させます。
- (例2)消失点に「夕日」を配置する → すべてのラインが夕日に向かい、非常にドラマチックな日の入り写真になります。
- (例3)あえて何も置かない → ラインの先にある「未知」や「永遠」といった、抽象的な感覚を表現できます。
私がこの構図を撮りたくなるときは、例えば京都の「伏見稲荷大社」の千本鳥居のような場所に出会った時です。無数に続く鳥居が作り出すラインが、奥の暗闇(消失点)へと収束していく。この「吸い込まれるような感覚」こそ、消失点構図の最大の魅力です。
この構図を撮るコツは、「カメラの高さを調整すること」です。
- ローアングル(低い位置)で撮る:地面の線がより強調され、迫力とダイナミズムが増します。
- アイレベル(目線の高さ)で撮る:より自然で、見たままの遠近感を表現できます。
まっすぐ伸びる道や廊下を見つけたら、それは消失点構図の絶好のチャンスです。
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6. パターンと繰り返しでリズムを作る「パターン構図」
時には、写真から「物語」や「主役」を排除し、「形とリズム」そのものの美しさを切り取りたい時があります。そんな時に使うのが「パターン構図」です。
これは、同じ形、同じ色、同じ質感が、画面内にリズミカルに「繰り返し」配置されている状態を切り取る構図です。
- (例)ビルの窓、並べられた商品、タイル、花畑、群衆、編み物の目
パターン構図の面白さは、日常の「当たり前」の風景から、非日常的な「デザイン」や「アート」を発見する点にあります。
■ パターン構図の2つのアプローチ
1. パターンで「埋め尽くす」
余計な余白や空を入れず、画面の端から端まで、その「パターン」だけで埋め尽くします。鑑賞者は、その規則性の心地よさや、圧倒的な物量感に引き込まれます。
2. パターンを「崩す」(破調)
こちらが、より上級者向けで、非常に強力なテクニックです。
画面の99%は同じパターンの繰り返し。しかし、たった1ヶ所だけ、そのパターンを「崩す」要素(=異物)を意図的に配置します。
- (例)赤いチューリップ畑の中に、一輪だけ咲いた「白い」チューリップ。
- (例)整然と並んだ窓の中で、一ヶ所だけ「開いている」窓。
- (例)同じ制服を着た群衆の中に、一人だけ「私服」の人物。
この「崩れ」の部分に、鑑賞者の視線は強烈に引きつけられます。これは「強調」のテクニックであり、「みんなと同じ」というパターンがあるからこそ、「違う」という個性が際立つのです。
私がよくやるのは、カフェで並んだコーヒーカップや、本屋で並んだ本の背表紙を撮ることです。それだけを撮れば「パターン構図」ですが、そこにカップを持つ「手」や、一冊だけ引き抜かれた「本」を入れる。それだけで、静的なパターンに「物語」が生まれるのです。
| パターン構図のアプローチ | 撮影方法 | 鑑賞者に与える印象 | 撮影例 |
|---|---|---|---|
| 1. 埋め尽くす | 画面全体を同じパターンで敷き詰める。 | 規則性、リズム、心地よさ、物量感。 | タイル、石畳、一面の花畑、壁の模様。 |
| 2. パターンを崩す (破調) | 規則的なパターンの中に、一ヶ所だけ「異物」を配置する。 | 強烈な視線誘導、強調、個性、物語性。 | 大量のリンゴの中の一つだけレモン。同じ椅子が並ぶ中の一人だけ座っている人。 |
7. シンメトリーで美しさを表現する「対称構図」
人間が、本能的に「美しい」「完璧だ」と感じる形のひとつに「対称(シンメトリー)」があります。このシンメトリーを写真に応用したのが「対称構図」です。
画面の中央に「中心線」をイメージし、その線を軸として「左右対称」または「上下対称」になるように被写体を配置する構図です。
この構図は、日の丸構図(中央配置)と非常に相性が良いです。
■ 左右対称
歴史的な建築物(教会、宮殿、寺院など)や、まっすぐ伸びる並木道など、デザインそのものが左右対称に作られている被写体を、真正面から捉えるときに使います。
この構図が与える印象は、「荘厳さ」「静寂」「完璧な美」「神聖さ」といった、非常に格調高いものです。
■ 上下対称(リフレクション)
こちらが、風景写真で最もドラマチックな効果を生むテクニックです。
「水面への反射(リフレクション)」を利用し、実景(例:山、建物、空)と、それが水面に映った「虚像」とで、上下対称の構図を作り出します。
この構図を成功させるための最大のコツは、「風のない日」を狙うことです。水面が鏡のように静止していなければ、美しいリフレクションは得られません。
(私の経験談)私は「ウユニ塩湖」のような写真を撮りたくて、雨上がりの早朝、風が止む一瞬を狙って、近所の大きな水たまりを撮影しに行ったことがあります。カメラを地面スレスレまで下げて、水面に映る「もう一つの世界」を切り取った時の感動は忘れられません。
この構図は、水面だけでなく、磨かれた床、ショーウィンドウ、時にはサングラスのレンズなど、光を反射するもの全てに応用できます。
(対称構図のコツ)
「ズレ」は禁物です。中心線がほんの少しでも傾いたり、ズレたりすると、鑑賞者は「気持ち悪さ」を感じてしまいます。三脚を使い、カメラの水平垂直(水準器機能)に細心の注意を払って、完璧な「対称」を目指すことが重要です。
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8. 被写体を引き立てる「三角構図」
写真に「安定感」「どっしりとした重厚感」そして「調和」をもたらしたい場合、「三角構図(三角形構図)」が非常に有効です。
これは、画面内に「三角形」を描くように被写体を配置する、あるいは被写体そのものが三角形をしている構図です。
ピラミッドやエッフェル塔、あるいは日本の城が、なぜあれほどまでに安定して、美しく見えるのか。それは、彼らが美しい「三角形」をしているからです。底辺が広く、頂点に向かって収束していく形は、私たちに「倒れない」という絶対的な安心感を与えます。
■ 三角構図は「万能」である
この構図が優れているのは、風景から人物、テーブルフォト(物撮り)まで、あらゆるジャンルに応用できる点です。
- 風景写真:
雄大な「山」そのものが、最強の三角構図です。手前の大地が底辺となり、山の頂点が頂点となります。 - 建築写真:
ビルや塔を下から見上げるように撮ると、自然と三角構図(+消失点構図)になります。 - ポートレート(人物):
「座っている人」は、自然と三角形のシルエットになります(頭が頂点、両膝と尻が底辺)。また、立っている人物をローアングルから煽るように撮ると、足元が底辺となり、安定感と同時に「威厳」や「力強さ」を表現できます。 - テーブルフォト(物撮り):
これが、私が最も多用するテクニックです。お皿に盛られた料理、コーヒーカップ、花瓶… これらの小物を「3つ」用意し、それらを「三角形の頂点」に配置します。たったこれだけで、雑然と置かれていた小物が「一つの作品」としてまとまり、非常に安定した美しい写真になります。
| 三角構図の向き | 与える印象 | 主な撮影シーン |
|---|---|---|
| 正三角形(底辺が下) | 最も安定、重厚感、安心感、威厳。 | 山、ピラミッド、城、座っている人物、ローアングルからの建物。 |
| 逆三角形(頂点が下) | 不安定、緊張感、動き、アンバランスな美。 | ジャンプしている人、体操選手、アクロバティックな被写体、デザイン的な配置。 |
| テーブルフォトの三角 | 調和、バランス、まとまり。 | 3つの小物(料理、雑貨)を三角形に配置する。 |
9. 空間の広がりを見せる「放射線構図」
消失点構図(H2-5)が「奥へ吸い込まれる」奥行きだったのに対し、「放射線構図」は、「中心から外へ爆発する」ような、強烈なエネルギーと広がりを表現する構図です。
これは、画面の「中心の一点」から、無数の「線」が放射状に広がっている状態を捉える構図です。
■ 放射線構図の代表例
- 太陽の「光芒(こうぼう)」:
最も分かりやすく、ドラマチックな例です。雲の隙間から差し込む光の筋(天使の梯子)や、木の葉の間から漏れる木漏れ日。これらはすべて、太陽を中心とした放射線構図です。 - 花の中心:
ヒマワリやコスモスなどを真正面からクローズアップで撮ると、花びらが中心から外に向かって放射状に開いているのが分かります。 - 花火:
夜空に開く花火は、放射線構図そのものです。 - 見上げたビル群:
高層ビルの真下に行き、真上を見上げてみてください。ビル群が天(中心点)に向かって伸びていく、迫力満点の放射線構図が出現します(これは消失点構図の一種とも言えます)。
この構図が与える印象は、「エネルギーの爆発」「生命力」「広がり」「神々しさ」といった、非常にポジティブで力強いものです。
(私の経験談)私がこの構図の力を実感したのは、森の中で撮影していた時です。雨上がりの早朝、木々の隙間から強烈な光の筋が、放射線状に地面に突き刺さっていました。夢中でシャッターを切ったその写真は、ただの森の風景ではなく、「生命の息吹」のようなものさえ感じさせる一枚になりました。
この構図のコツは、「中心点をどこに置くか」を明確に意識することです。その中心点から広がる「線」をファインダーいっぱいに捉えることで、エネルギーに満ちた写真が完成します。
| 構図 | 線の流れ | 与える印象 | 主な撮影例 |
|---|---|---|---|
| 消失点構図 | 複数の線が「奥の一点へ収束」する。 | 奥行き、集中、吸い込まれる感覚。 | まっすぐな道、線路、廊下。 |
| 放射線構図 | 一点から「外へ放射状に拡散」する。 | 広がり、エネルギー、爆発、生命力。 | 太陽の光芒、花火、花の中心、見上げたビル。 |
10. 黄金比と構図の関係性
最後に、これまで紹介してきた「構図」の、さらに根本にある「なぜ、それは美しく見えるのか」という理論的な裏付けの一つ、「黄金比(おうごんひ)」について触れておきましょう。
黄金比とは、古代ギリシャから発見されたとされる、人間が最も美しいと感じる比率「1:1.618(約5:8)」のことです。
パルテノン神殿、ミロのヴィーナス、あるいは名刺やクレジットカードの縦横比など、歴史的な建造物や美術品、そして私たちの身近なデザインにも、この黄金比(またはそれに近い比率)が数多く使われています。
■ 黄金比と「三分割法」は、似ている?
この黄金比(1 : 1.618)で画面を分割すると、
- 黄金比: 1 ÷ (1 + 1.618) ≒ 0.38。つまり、画面を「38% : 62%」の比率で分割します。
- 三分割法: 1 ÷ (1 + 2) ≒ 0.33。画面を「33% : 67%」の比率で分割します。
お気づきでしょうか。
数値は完全に一致しないものの、「黄金比の分割ライン」と「三分割法の分割ライン」は、非常に近い位置にあるのです。
つまり、私たちが「三分割法」を使って写真を撮り、「なんだかバランスが良いな」と感じている時、実は無意識のうちに、この「黄金比」に近い、人間が本能的に美しいと感じるバランスで被写体を配置していた、と言えるのです。
■ 黄金比をどう活かすか
(私の本音)撮影現場で、「よし、ここは1:1.618の比率で…」などと定規を当てて測るプロはいません。そんなことをしていたら、シャッターチャンスを逃してしまいます。
重要なのは、この比率を「暗記」することではありません。
「ど真ん中(50%)でもなく、三分割(33%)でもなく、その間(38%)あたりにも、“美しさのスイートスポット”があるらしい」という感覚を、頭の片隅に「知識」として持っておくことです。
三分割法で撮ってみて、なんだかしっくりこない。そんな時、被写体を「ほんの少しだけ」中央寄りに動かしてみる。その「微調整」の理論的な拠り所として、黄金比は存在します。
構図の基本は「三分割法」で全く問題ありません。黄金比は、その先にある、より深い「美の探求」のための羅針盤のようなものだと理解しておくと良いでしょう。
写真構図は「センス」ではなく「知っているか」の技術
プロが教える写真構図の基本として、王道の「三分割法」から、意図的な「日の丸構図」の応用、そして「対角線」や「フレーム」といった視線誘導の技術まで、10個の「型」を紹介してきました。
もう一度お伝えしますが、写真構図は「センス」ではありません。「知っているか、知らないか」だけの、明確な「技術」であり「知識」です。
料理のレシピを知らなければ美味しい料理が作れないように、構図というレシピを知らなければ、「なんとなく」の写真から抜け出すことは難しいのです。しかし、裏を返せば、今日ここで学んだ「型」を一つでも知ってさえいれば、あなたの写真は文字通り「一瞬で」変わる可能性を秘めています。
あなたの写真を変えるために、今日からできる具体的なアクションを2つ提案します。
- まずは、お使いのスマートフォンやカメラの「グリッド線」表示を「オン」にしてください。これが、構図を意識する(三分割法を実践する)ための強制的な第一歩となります。
- 次に、「何を撮ろう」ではなく、「どの構図を使おう」という視点で被写体を探してみてください。例えば、「あ、あの窓枠、フレーム構図に使えそうだな」「この道、消失点構図で撮ったら面白そうだな」と、世界が「構図のネタ帳」に見えてくるはずです。
ファインダー越しに見る世界は、構図という「武器」を手に入れた瞬間、昨日までとは全く違う姿を見せてくれます。難しく考えず、まずは一番簡単そうな「三分割法」から、あなたの写真に取り入れてみてください。

執筆者
畔栁 洋志
株式会社TROBZ 代表取締役
愛知県岡崎市出身。大学卒業後、タイ・バンコクに渡り日本人学校で3年間従事。帰国後はデジタルマーケティングのベンチャー企業に参画し、新規部署の立ち上げや事業開発に携わる。2024年に株式会社TROBZを創業しLocina MEOやフォーカスSEOをリリース。SEO検定1級保有
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